こんばんは…美藤(34歳・商社勤務)です。
オレ、ヘンなところに立っている。
オレ、死のうとしている…。
理由は…。
同じ会社の同僚の柚希(27歳・商社勤務)に男がいることがわかったからだ。
今日もいつものように仕事をして、いつものように帰宅をする予定のはずが…。
帰りに中央町のとある店に寄ろうとした時。
美藤「あれ?柚希ちゃん?」
そこに柚希がいた。
しかも一緒に話をしているのは男!
「梅の実」では同じ会社の同僚は剛(30歳・商社勤務)、健次さん(36歳・商社勤務)、アルベルトさん(ダルメシアン・♂9歳)がいるけど、いずれも奥さんがいる。桧山さん(40歳・食品卸売会社勤務)ではなさそうだし。
まさか…同じ会社の同僚の慶介(25歳・商社勤務)?顔はイケメンだけど、よく見ると慶介ではなかった。
柚希が男と話し合っていて、その瞬間…抱き合った!!
え?もしかして…柚希の彼氏…?
頭の中が真っ白になって、混乱した。
そこで同じ会社の同僚の真季(30歳・商社勤務)に電話した。
真季「もしもし…?」
美藤「あ…オレ…美藤だけど。」
真季「どうしたのですか?」
美藤「総務課にいる柚希ちゃんのことだけど、柚希ちゃんって彼氏いた?」
真季「え?知らなかったんですか?」
美藤「え!?」
真季「柚希、大学時代の先輩と付き合っているんですよ。もちろん、うちの会社の社員ではないですが。」
美藤「…。」
真季「…もしもし、美藤さん!?…どうしたんですか?…」
オレはショックだった。真季からの電話の声も放心状態…。
気が付けば、とあるビルの屋上の前にいた。
ビルの屋上から飛び降りようとしたその時!
「何やっているんですか!?」
やってきたのは、「梅の実」メンバーの稔(30歳・広告代理店勤務)だ。
稔「美藤さん、そんなバカなことをしてはダメですよ!!」
美藤「離せよ!!オレなんか、この世に生きてもどうにもならないんだから!!」
2人でもみ合っているうちに屋上の前の床に転んだ。
転倒した後、オレは右腕に激痛が…。
稔「大丈夫ですか!?」
美藤「大丈夫じゃねーよ。いてて…。」
と、稔はオレを担いでビルを出た。ちなみにこのビル、稔の会社があるビルだった。
稔は他の「梅の実」メンバーたちに電話をして、待ち合わせをしているメンバーたちの元へ。
やってきたのは南町。
駅前で待っていたのは孝幸(32歳・麻酔科医)と秀吉(ぞう・♂7歳)、憲男(35歳・弁護士)だった。
秀吉「どうしたんですか!?」
稔「帰り際に通行人の方が「知らない男の人が屋上の前へ立っている」と知らせてくれて、屋上に走って行って、そこで立っていたのは美藤さんだった。美藤さん、死のうとして、ぼくが必死で止めたんだけど、床に落ちて美藤さんがケガをしちゃったんだ…。」
憲男「2人医者がいることだし、診てもらったら?」
美藤「いいよ。大したことないし…いてて…。」
孝幸「あ…骨折しているかも。うちの病院が近くにあるから、行きましょうか?」
美藤「いいよ、余計なお世話だよ。」
稔「いったいどれだけ迷惑をかけていると思っているんですか!?いい加減にしてください!!何があったのかは知りませんが、死のうとするなんてバカですよ!!」
美藤「…。」
秀吉「ま…とにかく、どこかに入りましょうよ。寒いし。」
孝幸は他の「梅の実」メンバーと連絡を取って、あるメンバーの家に行くことに。
やってきたのは地元のマンション。オートロックなので、マンション前の呼び出しボタンを押して入らなければならない。孝幸はそのメンバーが住んでいるマンションの号数を押して呼び出し、相手も出たので入ることができた。
そして、メンバーが住んでいる家に。
呼び出し音を押して、ドアが開いた。相手は孝幸と同じ病院に勤務する和弥(25歳・看護師)だった。しかも和弥は慶介とは高校時代の同級生。
中へ入ると、部屋には同じ「梅の実」メンバーの俊也(24歳・テレビ局勤務)とウィリアム(ダックス・♂6歳)がいた。
たまたま3人で男子会をやっていたそうなので、じゃまかな…?
孝幸「ごめんね。男子会の最中に。」
和弥「いいですよ。もう終わりかけだったんで。」
ウィリアム「お茶入れましょうか?」
和弥「あ、ウィリ(ウィリアムのあだ名)、お願い。それで、どうしたんですか?」
稔「美藤さんがとある事情でケガをしちゃったんで、病院へ行こうとしたんだけど、本人が行きたくないって言って…。」
孝幸「骨折してるかもしれないんだ。一緒に処置を手伝ってもらっていい?」
和弥「あ、いいですよ。救急箱持ってきますね。」
秀吉「美藤さん、座りましょうね。」
美藤「おいっ!離せ!!」
秀吉の体がでかくて力があるので、離すことができない。仕方がなく診てもらうことに。
秀吉がオレの体を抑え、孝幸が診察をすることに。そこに看護師でもある和弥が加わって、診察の手助け。
医者といっても、孝幸は麻酔科医、秀吉は神経内科医なので、外科経験がなさそう…。
ただ、いずれも研修医時代に外科も経験しているので、軽いけがの治療はできるんだそう。
稔と憲男は待っている間にウィリアムがお茶を入れてくれたので、ほっと一息。
診察の結果、やはり骨折をしている可能性があるそうなので、とりあえず固定。和弥の家にあったDIYで使用した残りの板があったので、それを使って、包帯で固定。
孝幸「とりあえずこれで終わり。明日、地元の病院で診察を受けてくださいね。」
美藤「すみません…。」
秀吉「ま…大事に至らなければいいけど…。」
ウィリアム「あの…とりあえず、お茶を入れたので、みなさんどうぞ。」
孝幸&秀吉「ありがとうございます!」
というわけで、若手の3人は手分けをして、男子会で食べた食器の後片付けに入り、30代の5人はウィリアムが入れてくれたお茶を飲むことに。
稔「何で死にたいと思ったのですか?差支えなければ教えて下さい。」
美藤「…。」
秀吉「まさか…リストラ…?」
美藤「そんなんじゃないよ!!」
憲男「じゃあ何ですか?」
美藤「オレ…好きな子にフラれちゃった…。相手は同じ「梅の実」メンバーで、同じ会社の同僚の柚希で…。」
稔「柚希ですか?」
美藤「柚希が入社してから一目ぼれして、付き合おうとしたんだけど、勇気がなくて…そのまま片思いのまま…柚希が、男と一緒にいたのを目撃してしまって…同じ会社の同僚の真季に電話したら、柚希の彼氏だそうで…その時点で頭の中が真っ白になって…もう生きる気力を失ってしまった…。」
オレは泣いていた。つらくて、つらくて、ずっと泣いていた…。
秀吉「ぼくもわかります。付き合っていた彼女にフラれてから、ずっとショックを受けて死のうとしたことがあります。でも、医者になろうとする者が死ぬなんてバカみたいだって思って、結局死にきれませんでした。今は彼女のことは忘れて、仕事に没頭しています。」
美藤「秀吉…。」
俊也「オレも同じです。大学時代に付き合っていた彼女がいたんですけど、結局彼女の方から別れてくれって言われました。つらくて涙をこらえるのに必死でした。それ以来、彼女はいません。」
憲男「ぼくもこの年だし、社会的な立場の職業に就いているのにもかかわらず、彼女はいません。うちの法律事務所では女性は三枝所長(文子・41歳・弁護士)と事務職員のおばさんだけだし。かつて、事務職員の若い女性もいたのですが、すでに結婚して辞めてしまいました。」
稔「ぼくは彼女(梨沙・27歳・デザイン会社勤務)がいるので…言い返すことはできませんが、もし彼女が別れ話を切り出したら、同じような思いをしますね。」
孝幸「恋愛って、難しいよね~。特にぼくらのような年代になってくると。」
和弥「余談なんですが、孝幸先生って、女性看護師にモテモテなんですよ。「梅の実」でも泌尿器内科にいる弥香(23歳・看護師)がずっと会いたがっていて、毎回麻酔科の医局に寄っているんですよ。でもなかなか会えなくて寂しい思いをしているんだそうなので、会ってみたらどうですか?」
俊也「マジっすか!?」
孝幸「え!?全然知らなかった…。何で?」
和弥「利音(23歳・看護師)からこっそりと聞いて。」
ウィリアム「一度会ってみたらいかがですか?新しい恋ができるかもです。」
美藤「弥香って、こないだ合コンに来たよね。孝幸目当てで来たみたいだし。オレなんか全く相手にされなかったし…。」
稔「あ~美藤さん、泣かないで下さいよ~!!」
秀吉「孝幸、ぼくたちを裏切ったね。ひどい…(T_T)」
孝幸「ちがう!!そんなんじゃないって!!」
稔「っていうか、ぼくも裏切り者なんですけど。彼女ありなんで。」
ウィリアム「ぼくも付き合っている彼女はいます!相手は同じ大学の同級生です。」
俊也「いいな~ウィリは彼女がいて…。あ、さっきの男子会でそのことを話していたんです。」
憲男「誰?」
ウィリアム「まだ「梅の実」メンバーではないですが、ルックスはいとこのリーザ(ダックス・♀5歳)に似ています。詳細なことは言えません(#^.^#)」
孝幸「いいね~。かわいい子だろうね。ぼくはまだ付き合っている彼女はいないけど、バレンタインは女性看護師や女性患者からよくチョコをもらいます。他には同じ桜桃チームの女子陣からよく話しかけられますね~。特に女子中高生組は我が強くて…そのパワーにやられっぱなしです(>_<) でも、まだ彼女と呼ぶ子はいないんです。弥香ちゃんのことも初めて知って…。それで、和弥くんは彼女はいるの?」
和弥「一応います!相手はあえて言えませんが…。「梅の実」のメンバーではないです!」
俊也「え!?和弥も!?2人そろって彼女ありでナイショ!?」
憲男「若い子はいいね…って、美藤さん?」
稔「あ…美藤さんを励ますつもりが、逆に泣かせているじゃないですか!!」
美藤「…どうせオレなんか…どうせオレなんか…。」
和弥&ウィリアム「すみません…。」
しばらくは8人でオレの失恋話でなぐさめるつもりが、逆に恋バナになってしまい、落ち込みぱなし…。
次の日、会社を休んで病院へ。結果はやはり骨折だった。
全治1か月で、ギブスで固定。入院の必要はないけど、しばらくは通院をして、リハビリも受けなければならない。
好きな子にフラれたのと同時に大けがまでする悲劇。
死ぬことはダメだとわかっても、しばらくは落ち込んでしまう。
好きな子も「梅の実」のメンバーで、同じ会社の同僚で、しばらくは気まずくなる。
しかし、オレが死のうとして、それを引き留めたのは、「梅の実」の仲間たちだった。
もし、「梅の実」がなくて、普通のサラリーマンとして、普通に過ごす人間だったら、この世には生きてないと思う。
「梅の実」の仲間たちがいることに感謝をしたい。
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