梅の実学園の仲間たち

梅の実学園のメンバー(生徒)たちの物語です。現在のメンバーたちは4800人(匹)!!みんなで作る学園です!!

わが子が教えてくれた家族の絆

こんにちは。華奈子(37歳・主婦)です。

私は長野に住んでいます。ごく普通の専業主婦をしています。

 

生まれも育ちもずっと今の地域。短大も地元の学校を卒業しました。

知人の紹介で、夫の立(41歳・建築士)と結婚。のちに2人の子どもをもうけました。息子の夕(小5)と娘の夏(1歳)です。

 

夫はふだんは仕事で帰りが遅いですが、私の家事を手伝ったり、子どもたちと遊んだりと家族サービスは欠かせません。

子どもたち2人も明るくて元気。息子は思いやりのある優しい子に、娘はおっとりとした子に成長しました。

ごく普通の理想の家族ですが、実は大きな苦難がありました。今日はそのことを話したいと思います。

 

~1年前~

1年前の春、私は娘を出産しました。約3000gに近い元気な女の子です。

2人目の子どもを出産したことで、家族みんな喜んでくれました。特に息子は妹が生まれたことで、急にお兄ちゃんらしくなりました。

 

親子ともに退院し、普通の生活に戻りましたが、夫は仕事でほとんど戻らない日が続きました。

2人目の子どもの子育ては余裕を持ってできるのですが、夫が家に帰らないせいか、次第にストレスになってきました。

育児疲れによるストレスで気分も落ち込んでいました。

夕「ママ、どうしたの?」

華奈子「何でもないわよ!さっさと勉強しなさい!」

と、気が付けば、息子に八つ当たりしていました。

 

夫が帰ってくると、私は怒りが爆発していました。

立「華奈子、帰ったぞ。」

華奈子「あなた、いつも帰りが遅いじゃない。仕事、仕事って、いったいどこへ行ってきたの!?」

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立「大事なプロジェクトを任されているから、仕方がないだろ!!」

華奈子「たまには家族の顔を見てやってよ!!私一人でずっと子どもを抱えてて、もうしんどい!!」

立「もういいよ!!寝る!!」

と、ケンカ続き…。

 

夫婦の中の溝が深まり始めて、家庭不和の状態が続きました。

さらに悪夢は訪れました。

 

息子がだるそうな顔をしながら帰ってきました。

華奈子「おかえり。」

夕「…。」

いつもは「ただいま」って言うのですが、なんか様子がおかしい。

息子の部屋に入ってみると、ぐったりとした息子の姿が…。

熱を測ってみると38℃の熱が。寒気や胸の息苦しさも見られました。

熱や寒気はわかりますが、胸の息苦しさはいつもは見られなかった…。

 

早速地元の小児科へ。診察結果は心臓に大きな病気があるかもしれないとのことで、すぐに地元の大学病院に搬送されました。娘はまだ小さいので、一緒に連れてきました。

息子の検査の結果、「感染性心内膜炎」との診断。すぐに入院することに。

しかし、主治医の先生から、こんなことを言われました。

主治医「息子さん、先天性心疾患がありますが、これまでの病院では何も言われませんでしたか?」

華奈子「え!?何も言われませんでしたが…。」

生まれた頃の息子は何も問題なく、健康でした。心臓の病気もありませんでした。

主治医の先生の話では、息子は「心室中隔欠損症」がありました。しかし、生まれた頃は心臓の穴はほとんど見られず、誰も気づかれなかったそうです。

主治医「何か月か前にケガとか虫歯の治療とかはしていませんでした?」

あ…そういえば、こないだ息子が虫歯の治療のために歯医者へ行っていました。虫歯の治療自体は何も問題なく終わりましたが。

その虫歯の治療が原因で細菌に感染し、その細菌が心臓に入ってしまい、「感染性心内膜炎」を引き起こしたのではないかと、主治医の先生が言われました。「心室中隔欠損症」も「感染性心内膜炎」を発病したのと同時に見つかりました。

 

息子はすぐにHCUに収容され、抗生物質の点滴を開始。「感染性心内膜炎」は亜急性型と急性型がありますが、急性型だったら、発病から数日で死に至る病気だそう!幸い息子の場合は亜急性型で抗生物質の点滴を続けていれば完治する可能性は高いのですが、急激に病状が進行する場合もあるので、気は緩めません。

私は早速夫に電話。夫はすぐに病院に駆けつけてくれました。

息子はベッドで横になり、酸素マスクをつけていました。私はすぐにでも息子のそばに寄り添いたいのですが、娘がいるので、娘のおもりもしないといけない。夫も仕事があるので、ずっとそばにいるわけにはいかない。

 

しかし、息子の病状ですが、熱は下がってきましたが、心不全の症状が出始めたため、HCUから個室のICUに移動することに!

再び検査の結果、細菌のかたまりが心臓に付着し、心機能が低下しているため、すぐに手術が必要と診断されました。手術をしなければ数日は持たないって言われました。

私は呆然としました。夫も一緒でしたが、夫や先生の話に耳を傾けられなくなりました。

 

私は待合室でひとりで泣いていました。夫との家庭不和に赤ん坊である娘の子育て、そして息子の病が重なり、自分でもどうすることもできないくらい、精神的に落ち込みました。

気が付けば、病院の屋上へ行こうとしました。たまたま病院にいた看護師さんが気づき、そのまま息子の病室前に戻りました。

そのとき、私はまた涙が止まりませんでした。ボロボロになるくらい涙が止まりませんでした。

華奈子「夕を、夕を助けて!!…お願い…!!」

看護師「お母さん、落ち着いてください!!」

立「華奈子!!」

夫が私のそばに来てくれました。

華奈子「ああああーーーーつ!!!」

私は周りに聞こえるくらい嗚咽をしていました。

立「華奈子!!しっかりしろ!!」

 

夫に連れられ、私は同じ病院内の精神科へ。診断は「うつ状態」でした。

精神科医のほうから、薬を処方をした方がいいと言われましたが、娘の授乳中のため、断りました。しかし、娘を授乳できないほど、精神的に追い詰められているため、娘の授乳をやめて、粉ミルクに切り替えるよう指示され、私はすぐに点滴を受けました。

点滴が終わった後、夫が待っててくれました。

立「夕の手術のことだが、オレがサインをした。先生がいろいろと説明してくれて、全力を尽くしてくれるそうだ。夏はオレの実家が面倒を見てくれるから、家族で乗り切ろう!」

華奈子「あなた…。」

 

数日後、息子の手術が行われました。「心室中隔欠損症」の根治治療と心臓にたまっていた細菌のかたまりなどを取り除く手術で、約8時間かかりました。

手術は成功しましたが、予断は許せない状況で、強い抗生物質の点滴など、感染症の治療は続きます。息子の体は機械をつけられた状態で、口には人工呼吸器をつけていました。感染症の予防のため、家族との面会もできず、中には医師や看護師しか入ることができません。

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そこで、私たち夫婦は家族4人が一緒に写った写真を貼った色紙にメッセージを書いたものを病室に置いてもらうようお願いしました。先生たちも快く承諾してくれて、息子の枕元に置いてくれました。

私たち夫婦はガラス越しの外から息子の無事を祈るしかありませんでした。

 

”夕を、絶対に助けて下さい…。”

 

そして、主治医の先生が私たちの元へ。

立「先生。」

華奈子「息子は…。」

主治医「息子さんの意識が回復しました。病状は峠を越えました。」

息子の病状が回復し、家族の面会が可能になりました。

私たち夫婦は息子のいる病室へ。感染症防止のため、防護服とマスク着用をします。

立「夕…。」

息子は目を開けて、私たち夫婦のほうを向きました。まだ人工呼吸器をつけたままですが、少しうなづきました。

華奈子「よかった…。(涙声)」

私は泣きました。夫もそれにつられて泣きました。

 

その後、息子の治療は続きますが、術後の経過は順調に回復し、顔色もよくなりました。人工呼吸器から酸素マスクに切り替わり、しゃべれるようになりました。

華奈子「夕、痛む?」

夕「ううん、大丈夫。」

主治医「夕くん、あともう少しの辛抱だからね。一緒にがんばろうな。」

夕「うん。」

 

病室もICUからHCUに移動し、しばらくして普通の病室に移動しました。夫も仕事が終わったらまっすぐに病院へ来てくれました。

息子は点滴をしたままですが、車いすで移動することができました。息子は感染症の防止のため、マスクをつけています。まだ外に出ることはできませんでしたが、息子は窓に映る景色がとても新鮮に見えたと言ってましたね。

のちに歩けるようになり、点滴から飲み薬に変わりました。食欲も少しずつ回復しました。外に出られるようになり、男性の看護師さんが遊び相手になってもらって、サッカーのパスをしたりしました。

 

そして、息子の病気が完全に回復し、退院することができました。病院を出る前に若い先生や看護師さんたちから花束をもらいました。

夕「ありがとうございます!」

華奈子「本当にお世話になりました。ありがとうございました。」

久しぶりのわが家へ。その前に夫の実家にいる娘のところへ。

娘と再会した時は娘は大泣きしました。

華奈子「夏…。ごめんね…。これからはずっと一緒だからね。」

 

そして4人そろって家に帰りました。家に帰るとホッとする。

立「華奈子、今までゴメンな。」

華奈子「ううん。」

夕「どうしたの?しんみりとしちゃって。」

華奈子「何でもない…。」

夕「あ、パパ、ママ、ありがとう。パパとママ、病院の先生たちのおかげで病気を乗り越えることができたよ。治療はつらかったけど、気持ちが少し強くなったかなって。今度はぼくがパパやママたちに恩返しをする番。将来は人の役に立てるようになりたいな。」

華奈子「夕…。」

息子は病気を通じて、精神的に強くなったみたい。

 

私ですが、うつ状態が少しずつ回復しました。夫も私のことも気遣ってくれました。

大学病院の精神科からの紹介で、近くのクリニックに通院をすることになり、早速診察に行きました。薬はこれからの体のことを考えて、漢方薬に切り替えてくれました。

 

あれから1年、夫は相変わらず仕事で忙しいですが、家事・子育てに協力をするようになりました。私は夫の優しさに少しずつ気持ちが楽になってきました。

息子は大きな病気をしたとは思えないくらい、明るくて元気になりました。わんぱくさは昔と変わりませんが、病気をしたことで、健康に気を使うようになりました。将来は医者か看護師を目指しているそうです。

月に1回に定期検診をかねての通院がありますが、退院以後は何も問題はありません。虫歯の治療やけがをした際に予防のための薬を処方されます。かかりつけの歯科医の先生に息子の病気のことを話し、予約をして、治療日の前日に薬を処方されるそうです。歯の治療のときは治療の前に薬を飲んでから治療を受けます。もちろん、毎日の歯みがきや手洗い・うがいは習慣づけています。

娘は1歳になり、少し歩けるようになりました。性格はおっとりとしていますが、とても明るい性格の女の子です。

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娘が生まれたことから家族の絆は一時崩れかけましたが、息子の病気を通じて、改めて家族の絆を教えてくれました。

これから幾多の困難がありますが、家族4人力を合わせてがんばっていきます!

 

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