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梅の実学園の仲間たち

梅の実学園のメンバー(生徒)たちの物語です。現在のメンバーたちは4800人(匹)!!みんなで作る学園です!!

思い出の母の味~失った母を乗り越えて~

イラログ(その他) イラログ(その他:思い出・回想)

こんにちは。恵理子(24歳・漬物店勤務)です。

私は京都に住んでいます。京都にある漬物店「大黒屋総本舗」に勤務しています。職種は販売。名前の通り、漬物の販売をしています(ワラ)。

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「大黒屋総本舗」は家族経営の会社。社長が母親の妹の多巳おばさん(46歳・漬物店勤務)の夫の雪夫おじさん(47歳・漬物店経営)、顧問がおじいちゃんの半次郎(75歳・漬物店勤務)とおばあちゃんの八千代(77歳・漬物店勤務)という布陣。

 

うちの家族もこの漬物店の一員です。家族は私と父親の桂太郎(54歳・漬物店勤務)、弟の勇輔(大学3年)、妹の麻実(大学1年)の4人家族。母親は…2年前に他界しました。

今日は私たち家族についてお話したいと思います。

 

~2年前~

母親が亡くなる4年前、私は大学生。京都にある「修学院大学」に通っていました。専攻は経済学部。おじいちゃんも私が通っていた大学の卒業生です。3つ下の弟は高校生、5つ下の妹は中学生でした。弟も妹も京都にある中高一貫校に通っていました。

父親は会社では専務をしています。社長は義理の弟の雪夫おじさんに譲りましたが、父親はもともと口下手な性格なので、専務のほうがちょうどいいって言っていましたね。

母親は本店の店長をしていて、接客態度もよく、お客様に気を配る優しい女性でした。

 

お店も順調で、家族の生活も順風満帆でしたが、その幸せは音を立てて崩れてきました。

私が大学2年だった3年前、母親が突然倒れました。仕事へ出かける前に家を出ようとした時に、突然腹部が痛み出しました。

恵理子「お母さん!?大丈夫!?」

母親「痛い…。」

私はすぐに救急車を呼びました。地元にある「京阪大学病院」に搬送され、すぐに入院しました。

検査の結果、「大腸がん」と診断されました。診療に当たった医師が最初に告知をしたのは私と父親でした。母親の告知についてはどうするかを2人で相談しましたが、父親は告知しないでおこうと決めました。

 

私は母親が入院したことを弟と妹に伝えました。家事はしばらくは私が担当することに。おじいちゃんとおばあちゃん、多巳おばさん、末っ子の妹の絵巳おばさん(45歳・漬物店勤務)、雪夫おじさん、絵巳おばさんの夫の康弘おじさん(52歳・漬物店勤務)には父親のほうから話しました。

本店の店長である母親が不在のため、京都府内の支店の店長をしていた多巳おばさんが店長代行として、本店に急きょ異動になりました。多巳おばさんの後任は別の従業員の方が店長代行になりました。

 

母親の治療ですが、がん細胞が侵されている部分を切除する手術と、抗がん剤投与が中心。手術で取りきれなかったがん細胞は放射線治療を行いました。

母親はその当時は自分の病気のことを知りません。しかし、自分の病気ががんであることは見抜いていました。

母親「あんた、私の病気、がんなの?隠してもわかるわよ。」

桂太郎「…すまん。隠すつもりはなかったが、お前を傷つけまいと思い…。」

母親「いいわよ。もうわかっているから。長かった髪の毛が次第に抜けているのが見えているの。抗がん剤の副作用ね。」

母親は抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてしまっていた。男性ならそんなに気にならないけど、女性の場合はそうはいかない。髪は女の命とでもいうから。

 

休みの日には私と弟、妹が見舞いに来ました。母親は相変わらず見た目は元気。ただ、抗がん剤の副作用で髪の毛が全部抜け、頭をニットの帽子で覆われた。

母親の代わり映えに弟と妹がびっくりした。母親の病気は深刻であることを目の当たりにされたから。

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病室を出た私たちきょうだい。妹は急に泣き出した。

麻実「お母さん、どこか悪いの?」

恵理子「麻実、勇輔、驚かないで聞いて。お母さん、「大腸がん」と診断されて、今大きな治療を受けているの。お母さんが大変な状況だけど、私たちが力を合わせて乗り越えていこうよ!」

勇輔「…そうだね。何かできることない?」

それから家事はきょうだい3人で分担することになった。母親の看病は基本的に担当の看護師さんたちが行っているが、父親と私たちきょうだいも交代で母親の看病をしている。

 

それからしばらくして、母親の病状が回復し、退院することになった。しばらくは自宅療養をしなければならないので、職場復帰はまだまだ先。

でも、久しぶりの家族5人水入らずの生活。食事も私が担当していました。

母親が毎日漬けていた日の菜の浅漬け。母親が入院した今は切らしていたので、私が代わりに作った。

母親に食べてもらったが…。

母親「この味じゃない!恵理子、作り方を教えるから、あとでいらっしゃい。」

と、母親は私に日の菜の漬物の作り方を教えてもらった。

漬物は基本的に自分の店の漬物を食べているが、日の菜の漬物だけは母親が作るたった一つの味。日の菜の漬物は店にも売っているが、母親は店の日の菜の漬物は一切買わなかったし、もらいもしなかったです。

母親は日の菜の漬物が小さい頃から大好きで、家で試行錯誤をして、母親の好きな味に作り上げた。母親はいつもお酒と一緒に日の菜の漬物をお供にし、毎日のご飯も日の菜の漬物は欠かせなかった。

母親はそれだけに日の菜の漬物をこよなく愛している証拠だと思う。

 

その1年後、母親の定期検診の結果、がんが再発していることがわかった。

すぐに入院し、手術、抗がん剤投与という治療が続いた。回復したら退院の繰り返し。

その頃、妹は高校生になり、弟は高3の大学受験生に。私は大学3回生になり、就職活動もしなければならない。

私は家事をしながら、学業と就職活動を両立しました。結果、念願だった新聞社に内々定をもらいました。

弟も大学に合格し、家族に春が訪れたのも束の間、悪夢が訪れました。

 

母親の病状が再び再発し、肝臓にも転移が見つかりました。

しかも肝臓のがんは肝臓の全てに侵され、肝移植しか助かる道がありません。

やがてがんは全身に侵され、手術は不可能。抗がん剤放射線治療しかありません。

日に日に弱っている母親。気持ちだけは元気でした。

 

その後、母親の容体が急変し、私たち家族とおじいちゃん、おばあちゃん、おばさんたちが母親の元へ訪れました。

母親は会話ができない状態になり、人工呼吸器をつけなければならなくなりました。

医師らの懸命の治療をしましたが、効果もなく、3日後に亡くなりました。50歳でした。

麻実「お母さーーーん!!」

多巳「お姉ちゃん、うそでしょ?起きてよーー!!」

恵理子「お母さん…。」

私と妹、おばさんたちは泣きました。おじいちゃん、おばあちゃんは自分たちより先に娘がいなくなることに無念でいっぱいです。

おじさんたちもあとでかけつけ、母親の死を看取りました。

 

母親の葬儀は親族のみで行い、従業員たちと親しい友人たちには後日社葬が行われました。

葬儀が終わった後、テーブルには1冊のノートが。中を見ると、母親が書いた「エンディングノート」でした。

中身はこれからの家のことや母親が亡くなったときの手続きなどが書かれていましたが、その中に母親が作った日の菜の漬物のレシピが書かれていました。

勇輔「姉ちゃん!冷蔵庫に漬物があるよ!!」

弟が見つけたのは、亡くなる1週間前に母親が漬けた日の菜の漬物だった。

それを私が刻んで、家族4人で食べました。

そう、この味。酸っぱくなくて、ほどよい塩気でおいしい。これが母親が作った最後の味だった…。

日の菜の漬物をかみしめた瞬間、私は涙が止まらなかった…。

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母親の死がきっかけで、入社する予定だった新聞社の採用を断念して、家業の漬物店を継ぐことに決めた。

父親はびっくりしたが、私が決めたことは一切口にせず、そのまま受け入れてくれた。

母親のような漬物店の看板娘になりたい!別に母親が継いでくれって言われたことがないけど、1つの夢があった。

母親直伝の「日の菜の漬物」を日本中に広めていきたい!それだけ。

 

2年後、私は大学を卒業し、家業の漬物店の会社に就職しました。現在は京都府内の支店の販売員をしています。まだ2年目ですが、母親のような販売員を目指しています。

弟は「京阪大学」の3回生。専攻は経済学部。「京阪大学」は京都と大阪の2つのキャンパスがありますが、弟が通うキャンパスは大阪にあります。就職活動の真っ最中ですが、家業の漬物店に就職するか迷っているそう。

妹は大学生に。京都にある「京都女学院大学」の1回生。専攻は看護学科。母親の病気がきっかけで、看護師を目指して勉強をしています。

母親が店長をしていた本店は多巳おばさんがそのまま店長として引き継ぐことに。

父親は相変わらず専務の仕事をしています。

 

そして、母親直伝の日の菜の漬物ですが、私が仕込みをしています。まだ母親の味に近づいていませんが、いつか母親の味に近づくことを信じて。

母親はもうこの世にいませんが、日の菜の漬物の味はこれからも生き続けていきます。

 

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