梅の実学園の仲間たち

梅の実学園のメンバー(生徒)たちの物語です。現在のメンバーたちは4800人(匹)!!みんなで作る学園です!!

失ったもの残したもの

こんにちは。理佐(24歳・公務員)です。

私には、年の離れた兄がいました。

しかし、私が大学生のときに亡くなりました。

病気や事故ではなく、自ら命を絶ちました。まだ30代の若さ。

 

原因は職場によるストレスで「うつ病」になっていましたが、兄はそれ以前に子どもの頃からクラスメイトや先生とのトラブルを起こしていました。

小さい頃から人とのコミュニケーションが取れず、人と話すのも苦手でした。学校ではいじめにあって、登校拒否になっていたことが何度もありました。

家庭では厳格な父親から暴力を受けられていました。私や他のきょうだいには暴力をふるうことが少ないですが。

 

兄は地元の高校を卒業後、東京の大学へ。そこでも、学生とのコミュニケーションが取れず、バイト先でもトラブルを起こして、何度もバイトをやめたり、はじめたりの繰り返し。

大学を卒業後、実家には帰らずに、大手の会社へ就職しましたが、わずか半年で辞めました。

その後はアルバイト、派遣…と転職の繰り返し。

会社の都合による整理解雇もありましたが、多くが人間関係によるトラブルが原因の解雇や契約解除。また、自分から会社を辞めたこともありました。

 

亡くなる2年前に念願の正社員への就職。しかし、ここでもうまくいきませんでした。

職種は本人が希望していたコンピュータ関連の職ではなく、一番苦手とした営業職に配属させられました。

営業成績も思うように出せず、上司に叱咤される毎日。同僚たちは冷ややかな目で見ていました。

同僚たちと一緒にランチをすることはなく、一人でトイレの中で食べていました。

就職してから1年後に、別の部署に配置転換させられました。給料も就職したときと比べて下がってしまいました。

 

そしてついに、兄は会社を休職しました。部屋で自傷行為を起こし、精神病院へ入院。診断は「うつ病」でした。

その後退院しましたが、別の精神科クリニックで「発達障害」の疑いがあることがわかりました。

大学病院で確定検査を受けました。心理テストだけでなく、家族からの聞き取り調査があるため、実家から母親を呼んできました。

 

確定検査の結果が出る1週間前に、兄は会社から解雇通告を受けました。その次の日に兄は自殺を図りました…。

近所の知人から連絡を受け、母親とともに兄の家にかけつけましたが、すでにマンションの屋上から飛び降りて、即死しました。

兄の遺書には「もう人とのトラブルを受けるのはもう嫌だ。ずっと一人ぼっちだった。死んで楽になりたい。…」と書いてありました。そしてさらに「お父さん、お母さん、そして、家族のみなさん、ずっと迷惑をかけてごめんなさい。」と家族に対する謝罪がありました。

 

その後、実家で葬儀を済ませました。葬儀は兄の遺志で、親族のみで行いました。

葬儀はあっという間でしたが、家族が一人いなくなってしまった寂しさ、何で兄を助けられなかったんだろう、何で兄のサインに気が付かなかったんだろうという後悔で、私は大粒の涙を流しました。

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兄の死で、私たち家族は兄に対して、これまで何もすることができませんでした。死んでから兄の無念を気付いてしまうなんて、私たちって本当に冷たい人間なんだなって、自分を責めていました。

しばらくして、確定診断の結果、「特定不能の広汎性発達障害」と診断されましたが、もう遅い…。

 

兄が亡くなってから1年後、母親が遺物を整理したら、1枚の絵がありました。

兄が小学生の時に描いた水彩画でした。

この水彩画は県の小学校の絵画展で表彰された1枚です。

兄は子どもの頃からコミュニケーションは苦手でしたが、絵を描くのが得意でした。

絵はそれだけではありません。

兄が一人暮らしをした部屋には、たくさんの絵が残されていました。すべて兄が描いたものです。

兄はもういなくなりましたが、この世で生きた証として残してくれたものがありました。

 

私は大学を卒業後、都内のハローワークで職業相談を担当しています。主に一般の求人を担当していますが、兄のような障害を持っている方、または疑いのある方もここに訪れてきます。

その人たちも多くが転職をくり返している人が多く、コミュニケーションによる悩みを抱えていました。

 

日本では、発達障害者の数が増え続けています。子どもも多いのですが、特に大人の方が多いことにとてもショックを受けています。

大人の発達障害の支援は子どもに比べて手薄く、支援センターさえもない(あっても機能していない)自治体もあります。

診断する病院も増え続けてはいますが、大人の発達障害を専門的に扱う病院・クリニックは依然として少ないです。

 

「梅の実」メンバーでも、発達障害を抱える大人たちがいます。就職している人もいれば、職を失っている人もいます。子どもたちも発達障害を抱えている子たちがいます。

 

私は大人の発達障害の特性や日常の生活の仕方について、各地の講演会にも積極的に参加しています。

そして、いずれは障害者向けの職業相談部門への異動を希望し、多くの発達障害者に対する職業の相談や支援をしていきたいです。それが、亡くなった兄に対する「償い」でもあるから。

 

また、子どもたちも含めて、発達障害の支援が増え続けることを信じて、今日もがんばっていきます。

 

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