梅の実学園の仲間たち

梅の実学園のメンバー(生徒)たちの物語です。現在のメンバーたちは4800人(匹)!!みんなで作る学園です!!

ずっと一緒…

こんばんは。克(27歳・電力会社勤務)です。

今日もいつものように仕事。

電気のメンテナンスに工事…といつもと同じだ。

職場の人間関係はさほど変わらない。

変わったといえば…政治が変わって、みんな生活しづらくなったことかな?

 

♪プルルル…♪

 

電話だ。相手は…進次郎(大学2年)だ!なんであいつ、こんな時間に。

克「もしもし。」

進次郎「もしもし、克さん?進次郎です。」

克「どうした?」

進次郎「今、「梅の実」の大学生メンバーと打ち合わせがあったんですけど、その帰りにちょっと大変なことがあって!!」

克「大変なことって?」

進次郎「同じメンバーの佑介さん(26歳)が屋上から飛び降りようとしているんです!!今、他のメンバーが説得に行っています!」

克「わかった!すぐに行く!!場所は…?」

と、進次郎から電話があり、オレはすぐに現場へかけつけることに。

 

場所は府内にある古びたビル。

ビルの前に進次郎と圭太(大学3年)の2人がいた。

オレは屋上に行った。すると飛び降りようとした佑介と、説得をしようとした敏明(大学2年)、幸雄、智之、敦志(以上、大学1年)、ハバナベンガル・♂4歳)と、敏明たちと偶然会った大澤先生(44歳・中学教師)がいた。

克「おい!やめろよ!!」

佑介「来ないで!!もうぼくには何の夢も希望もない、いっそ死んだ方がましだ!!」

克「そんなことをしてもみんな悲しむぞ!!」

佑介「ぼくには誰も悲しむ人がいない。親もクラスメイトも、元職場の同僚もみんなぼくが死んでも喜ぶから。だからいないほうがいいんだ。」

大澤「誰もそんなこと言ってないだろ。お前が死んだら、みんなが迷惑する。」

敏明「そうですよ。そんなバカなことしちゃダメですよ。」

オレは敦志と幸雄をこっそり呼び、耳打ちをした。

大澤先生たちが佑介を説得しているすきを狙って…。

佑介「わーーーつ!!!」

オレはフェンス越しにいる佑介を捕まえ、とらえた。

克「バカヤロー!!」

オレは佑介を殴った。悪いことをしているのはわかっているが、やむを得ない。佑介が自分で死のうとしたんだから。

克「誰のせいで迷惑をかけていると思っているんだ!お前も大人なんだし、もう少し冷静になれよ!!」

佑介「あああああああああーーーーーーーーーつ!!!!!!」

佑介は泣き出した。後ろにいた敦志と幸雄が佑介の両腕を組んだ。

大澤「とりあえず、下へ戻ろう。寒いし。」

 

みんなで佑介の家へ行くことに。

佑介はちょっとパニックになっているが、進次郎が近くに住んでいるので、住所は知っているそう。

場所は築20年以上もする古いアパート。外観も補修した後があり、ちょっと汚い。

敏明「鍵、持ってます?」

佑介は部屋の鍵をつけたくさりを敏明に渡した。

 

ドアを開けると…汚い…。

台所は全く片付けしていなくて、部屋も汚れている。

ちゃぶ台の上には数多くの封筒が。すべて就職試験の不採用通知。中にはアルバイトやパート募集のものも含まれる。周りには家賃や光熱費の支払いの催促状がある。

佑介は無職の状態。生活保護を受けながら生計をたてているけど、就職試験のための費用ですべて使い果たしている。消費者金融からの借金もある。

また、佑介は「アスペルガー症候群」という発達障害があり、人とのコミュニケーションが取れない。2次障害でうつやパニック障害がある。

これまでの仕事も大学を卒業してから勤めた会社が、人間関係の悪化を理由にわずか1か月で解雇された。その後はアルバイト、パート、派遣社員と、いろんな職を転々としていたが、長続きせず、4年間で約30社近くも転職をくり返していた。一番長くても3か月。

 

ずっと一人で抱え込んでいた。自分の生活のこと、お金のこと、全部誰も頼らないで、ずっと一人ぼっちだった。

 

食べるもの、飲むものが何もなかったので、進次郎が近くのコンビニへ行った。

中学校の教師をしている大澤先生と看護師の「卵」でもある敦志が佑介のそばに寄り添い、あとのみんなで部屋の片づけをした。

佑介は終始無言。敦志が落ち着くまで佑介の背中をゆっくりなでている。

5人で片づけをしたらあっという間。ごみも大事な書類以外は全部ゴミ袋へ。

 

進次郎が帰ってきた。

ハバナ「おかえり。なんか買った?」

進次郎「温かい缶コーヒーやお茶、あとそれと、お腹がすいたと思うから、おにぎりやサンドイッチ、お菓子も買ったよ。」

克「ありがと、いくら?」

進次郎「いいですよ。オレのおごりで。」

克「そうはいかないよ。レシートは…。」

と、オレは買った品物のお金を進次郎に渡した。

進次郎「ありがとうございます!」

克「いいよ。今日はオレのおごりだから。」

みんなそれぞれ飲み物を渡した。

佑介にも。

克「飲むか?」

佑介「はい…。」

佑介はありがとうは言わなかったが、軽くおじぎをした。

 

克「さっきは殴ってゴメンな。」

佑介「…。」

克「お前とは、同じメンバーなのに、一度もイベントには来てなかったよね。ずっと来ないからどうしているのかなって思った。でも、こんなに深刻に悩んでいるとは思わなかった。」

大澤「こないだの「いじめ」のチャットで、ぼくも参加したけど、佑介も自分のつらさを書き込みしたよね。」

圭太「ぼくは書き込みはしなかったけど、みんなのつらい体験を拝見しました。みんな深刻に悩んだり、自分の体験を克服した人もいましたしね。」

克「確か、佑介は仕事のこととか、生活保護のこととか、自分の障害のことなど、つらい思いをいろいろと書き込んだよね。チャットの書き込みにはあ…そうかって思ってたけど、実際に会ったらこんなに深刻に抱え込んでいたなんて、全然知らなかった。そういうことを何でもっと早く相談しなかったん?」

佑介「…誰にも言えなかった…みんなネットでひどいことを言われたから。」

敏明「発達障害も貧困も、ネットでいろいろと悪いことばかり書き込まれていたよね。特に生活保護はめちゃくちゃたたかれたよね!」

ハバナ「あったね。ネットでひどいことを書かれているのを見た。いずれにしても当事者じゃないから、軽く書くんだよね。これが当事者だったら、人ごとではないと思う。」

智之「ぼくもそう思います。変なネットの掲示板は見ないほうがいいと思います。」

大澤「パソコンや携帯でも「フィルタリング」をつけることができるの知ってるか?ぼくは中学校の教師をしているので、生徒に携帯やパソコンを持っていたら、その保護者にフィルタリングをつけるようにお願いしてもらっている。でも、フィルタリングは大人でもつけることができるんだ。」

進次郎「あ、そうなんですか?」

敦志「全然知りませんでした。そういうソフトがあったらダウンロードしてみます。」

克「オレのところは子ども2人(大輝・4歳&穂乃香・3歳)がいるから、子どももパソコンをよく使うんだよね。うちの家では子どもに見せられないサイトにアクセスできないように、フィルタリングをつけてる。」

幸雄「オレも弟(幸久・中3)がいるから、親が弟の携帯にフィルタリングサービスをつけさせてる。」

克「あと…仕事のことなんだけど、これだけ転職回数が増えていたら、就職は難しいぞ。しばらくは生活保護に頼らざるを得ないかもしれないけど、何らかの訓練は必要だと思う。」

佑介「そんなの…ありません…。発達障害の支援って本当にないんです!子どもの発達障害は支援体制が整っているのに、大人はほったらかしなんですよ!!」

大澤「確かに子どもに比べると手薄いかもしれない。でも、知り合いから聞いたら、少しずつ支援も進んでいるそうだぞ。そういったことをちゃんと調べたのか?」

佑介「…いいえ。支援センターもないし、最近は行っていないけど、当事者グループの集まりぐらいしか知らない。」

敏明「支援センターも大人対象の相談窓口もありますし、ぼくの地域でもちょっと遅れましたが、大人の支援体制もできましたね。」

敦志「ぼくらも発達障害のことをまだまだ知らないことばかりだけど、自分たちなりに解決の糸口を探した方がいいですよ。ぼくたちもまだまだ知らないことがあったら調べておくからね。」

大澤「発達障害っていうわけではないけど、就職が困難な人のための就労訓練とか、作業所や就労移行支援施設での就労訓練もある。就労訓練は「SSTソーシャルスキルトレーニング)」などの人間関係の訓練も多く取り入れているし、施設によって訓練方法が異なる。まずは、職業センターで自分の適性を見てもらった方がいいと思う。」

克「それもありますか。」

智之「あと、ボランティア活動をすることでも、人間関係を学ぶ場でもありますしね。ボランティアは登録をすれば、好きな時間に活動できるし、ボランティアによってはお金が少しもらえるところもあります。」

進次郎「なるほどね。」

大澤「あと、借金のことだけど、弁護士や司法書士に相談する方が一番早い。今後の借金の返済を楽に返す方法とかを教えてくれるし、借金の程度によっては、「過払い金」が戻る可能性がある。弁護士や司法書士は、普通は相談するだけでもお金がかかるが、借金の場合はどこへ行っても無料で相談することができるんだ。」

克「少しずつでいいから、自分が楽になる方法を見つけていこうよ!オレたち「仲間」なんだから。」

佑介「…仲間?」

克「そう。みんなそれぞれ悩んでいることも違うし、家柄も違う。でも、「梅の実」のメンバーはここにいる人たちも含めてみんな「仲間」だから。これからもずっと一緒だからね。」

佑介「…ずっと一緒…。」

佑介は泣き出した。「仲間」「ずっと一緒」という言葉に反応して、ボロボロに泣いた。

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敦志「そうですよ。誰一人大切な人たちばかりですから。」

 

佑介が幸せになる方法、まだまだ先が長いけど、少しずつ解決していかなければならない。

一番の幸せは、一生働ける職場を見つけること。そのためにはボランティアや福祉施設などで人間関係を構築できる訓練を身につかなければならない。あとで聞いた話だが、佑介が住んでいる地域も大人の発達障害の支援は少しずつだけど、できてるそうだ。

一生働ける職場を見つけるのには時間はかかるが、必要最低限の努力をして、一生涯の職場を見つけ、いずれは借金も完済し、生活保護もやめることができるようにしたい。

 

課題はものすごく多いけど、佑介の新たな挑戦はまだはじまったばかり!

オレたちも少しだけど、できる限りのバックアップはしたい。

 

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