こんにちは。白浜(41歳・小児科医)です。
今月のチャットジャッジはこのお題です。
「小児科・老年科は必要?不要?」
小児科は中学生以下の子どもが対象の診療科で、どこの病院・クリニックでも小児科は必ずあります。これに対して老年科は院にもよりますが、65歳以上の高齢者が対象の診療科で、高齢化社会の影響で老年科は増えつつあります。
しかし、年齢間の引継ぎや専門的な診療知識の不足で問題があり、小児科・老年科を廃止にし、各臓器・器官ごとの診療科でスムーズに診察をすべきだという声もあります。
そこで小児科・老年科は必要というメンバー4人と、不要というメンバー4人をパネリストに迎えて議論したいと思います。
ファシリテーターは私・白浜です。私自身は都内の大学病院で小児科の医師をしています。主に重度の小児科疾患を専門にしています。
必要派メンバーからは茉奈ちゃん(小5)、亜哉子さん(38歳・航空会社勤務)、より子さん(73歳)、あじさん(ねこ・♂8歳)です。不要派メンバーからは優太くん(中1)、浩貴さん(41歳・保険会社勤務)、野山さん(62歳・鉄鋼会社勤務)、絵巳さん(45歳・漬物店勤務)です。
それぞれ中学生以下の子ども、中学生以下の子どもを持つ保護者、60歳以上の高齢者、60歳以上の高齢者を持つご家族の方を選出しました。尚、中学生以下の子どもとその保護者は小児科について、60歳以上の高齢者とそのご家族は老年科についてプレゼンをお願いします。
まずは必要派メンバーからのプレゼンです。
>私は小児科は必要だと思います。私自身、病気で入院したことがあり、親がいない環境ですごく怖くてさみしい思いをしました。そんな時に動物や模様で彩られた外観だととても落ち着きます。あと、同じ病気を抱える友達が増えるのもうれしいし、親との面会や付き添いができるのも大きいと思います。(茉奈)
>私は小5の息子(廉・小5)と小3の娘(侑紗・小3)の母親ですが、実は2人の子どもの姉、長女がいました。長女は生まれてすぐに「拘束型心筋症」を発症し、1歳にならないうちに亡くなりました。拘束型心筋症は重い心筋症の一つで、心臓移植でないと完治することができません。長女の場合はすでに重篤な症状で、心臓移植が必要ですが、日本では脳死下での臓器移植のルールが世界的に厳しく、6歳未満の子どもの臓器提供が非常に少ないです。国内での移植は望めず、海外での移植に切り替えて準備をしましたが、のちに長女は容体が急変し、そのまま亡くなりました。長女を失った悲しさで私は泣き叫んでいましたが、そんな時に担当の看護師さんやCLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)の方が話を聞いてくれて、心がとても落ち着きました。小児科は子どもの治療やケアだけでなく、家族のケアも行ってくれるスタッフが常駐しており、親子にとって本当にありがたい存在です。小児科でしか直すことができない治療もあり、小児科は子どもを持つ親にとっては必要です。(亜哉子)
>私は老年科は必要です。老年科は私が住む和歌山でも増えており、私の家の近くに老年科を併設した内科クリニックがオープンしました。老年科は主に内科治療が中心で、高齢者特有の病気の治療も行っています。高齢になってくると、いろいろな病気にかかりやすく、複数の病院に行かないといけなくなるので、老年科だと1本で済みます。(より子)
>うちは両親(さば・ねこ・♂14歳&よめ・ねこ・♀14歳)と同居しているため、近くの老年科のクリニックでお世話になっています。老年科はここ最近できた診療科で、子どもには小児科があるのと一緒で、高齢者には老年科が必要になってきます。もしも親が介護になってしまった場合、老年科の医師が病気の治療をし、看護師や介護士がケアや介護をしてくれるのも大きいと思います。超高齢社会に対応した老年科は今後も増えてくると思います。(あじ)
他のメンバーからの意見があります。
>私は都内の小児科クリニックの医師をしています。小児科は赤ちゃんから中学生まで、子ども独特の病気や障がいを専門に診ます。普通の内科だと子どもが大人と接するのは困難で、子ども同士だと子どもも安心しますし、カラフルなキャラクターのある内装で病院に行きやすくなります。また、小児向けの薬を処方したり、小児に合わせた薬の量にするのがとても楽です。(和重・47歳・小児科医)
>私は宮崎県内の保育園で保育士をしています。保育園では子どもが急に熱を出したり、腹痛で体調が悪くなる場合があります。そんな時、小児科があるとスムーズに診察ができるので、親にとっても安心だと思います。(善花・45歳・保育士)
不要派メンバーから反論です。
>小児科の場合、中学生から高校生になるときの引き継ぎはできているのでしょうか!?小児科から内科・外科に引き継ぎになってしまうと、専門的に診てもらえる医師が少なく、思わぬ医療事故になる恐れがあります!!それにこの歳でキャラクターだらけの診察室や待合室に行くのは気持ち悪いです!!(優太)
>普通の内科治療だと小児科は必要かもしれませんが、心臓や脳、整形外科関連は小児科では困難だと思います!!専門的な診療科のほうが安心だと思います。(浩貴)
>私はいつも病院に行くときは内科などの普通の診療科に行くので、老年科はいらないですね。(野山)
>老年科は高齢者をバカにしていますね!!(絵巳)
引き継ぎ、不要派メンバーからプレゼンです。
>ぼくは心臓の病気で約10年間治療を受けました。とは言っても、小児科ではなく、心臓血管外科です。心臓血管外科では心疾患を持つ赤ちゃんから高齢者まで、幅広く治療を受けることができるので、小児科のように、中学生から高校生への引き継ぎの必要もなく、大人になっても専門の医師がずっと診てもらえるので、その分はすごく安心しています。さて、小児科はいろいろと問題があり、一番の問題はさっき言った中学生から高校生への引き継ぎの問題です。一部の病院では高校生を受け入れてくれる小児科もありますが、ほとんどが同じ病気の継続治療のみです。多くの病院の小児科は中学生までしか受け入れることができず、高校生になったら内科や外科に行かなければなりません。その時に担当する医師は当たりはずれがあり、小児科の先生が専門的に診てくれる病気が内科・外科になってくると専門的に診てもらえるとは限りません。特に小児がんでは晩期障害の問題もあり、晩期障害の知識を知らない内科医や外科医が多く存在します。また、高校生を受け入れてくれる小児科でも、大学生等になってくると引き継ぎが必要になってきます。これらを踏まえて、中学生と高校生で分断される小児科は必要ないと思います!!あと、小児科の外観はキャラクターで内装されているところが多く、小さい子どもには受け入れやすいですが、中学生では受け入れ難いです。外観は年齢に合わせて変えたほうがいいと思うし、キャラクターいっぱいの小児科の外観は個人的にはいらないです!!(優太)
>私は中学生の息子(良貴・中2)の父親ですが、正直言って、小児科はいらないです!!私のところは息子ではなく、妻が息子を妊娠と同時に「拡張型心筋症」にかかっていたことがわかり、出産は危険な状態です。出産に関しては産科と小児科が連携をとっているところが多いですが、心臓の病気があったときはどうするのですか!?心臓は小児科では困難で、循環器内科か心臓血管外科でないと診ることができません。特に「拡張型心筋症」のような難病は。心臓だけでなく、脳や整形外科、精神科は小児科では困難な診療で、専門的な診療科でないとちょっと怖いです。あと、小児科は中学を卒業し、高校に進学と同時に小児科から切り離されてしまいます。それだと医者を変えなければならない事態になってしまい、親子で混乱を招くことになります。小児科・老年科のような世代を分断した診療科はこの際廃止にして、各器官に対応した診療科で一貫して診療をする体制にしたほういいのではないでしょうか?ちなみに余談ですが、妻は息子を出産後に拡張型心筋症による心不全で死にました。(浩貴)
>高齢化社会に対応して、日本では65歳以上を対象とした老年科が増えてきました。しかし、老年科で何の診察ができるのでしょうか?かぜや肺炎の時は内科、骨折の時は整形外科、心臓の病気の時は循環器内科・心臓血管外科、脳の病気の場合は脳神経外科、認知症の場合は精神科…と、専門の診療科があります。専門の診療科で診てもらったほうが安心するのに、なぜ老年科で診察を受ける必要があるのでしょうか!?(野山)
>私は高齢の両親(半次郎・75歳・漬物店勤務&八千代・77歳・漬物店勤務)がおり、ともに持病を持っているため、それぞれの専門の診療科の病院で診てもらっています。高齢者はいろいろな病気やけがを抱えている人が多く、多くの診療科の病院のお世話になります。しかし、それを逆手に若者と高齢者を分断して、高齢者を老年科で診てもらうのは高齢者をバカにしているとしか思えないです!!自分の両親には最高の診療科で診てもらいたいのに、何で老年科を設置する必要があるのでしょうか?(絵巳)
他のメンバーからの意見があります。
>小児科や老年科で診れる範囲はかぜなどの軽度の症状くらいです。しかし、心臓病や脳梗塞、がん、精神疾患などは専門的な診療科のほうが有利です。私のような脳神経外科の場合は脳は繊細な臓器なので、脳の治療は脳神経外科医でないとできません。脳外の専門ではない小児科や老年科の医師が診察をすると、誤った治療をしてしまい、取り返しのつかないことになってしまいます。子どもと若者・大人と高齢者を分断して治療をするよりも、子どもから高齢者まで一貫した治療が可能な専門的な診療科が一番です。薬も量の調節だけ気をつければ、どの患者でも投与は可能です。(長島・45歳・脳神経外科医)
>最近では高齢化社会に対応して、老年科を設置する病院が増えていますが、高齢者の場合は様々な疾患にかかるため、すべての疾患に対応できるのは困難です。私が働いている介護施設では様々な症状を持つ高齢者が入居しており、専門に診てくれる診療科も異なります。(吟・57歳・介護福祉士)
必要派メンバーからの反論です。
>私はキャラクターがあったほうが診察の時に安心するので、小児科は必要ですが、高校生になったときが一番困ります!!高校生になってくると先生も代えないといけないので、とても不便です!!(茉奈)
>私も子どもが高校生になったときが一番困りますね。小児科は中学生までしか診てもらえることができず、高校生になると別の医師に診てもらわないといけないのが、本当に困ります!!医者は専門の治療方針で当たりはずれがあるので、中学生までは専門的に診てもらえても、高校生以降は専門的に診てもらえない場合が多いです。(亜哉子)
>確かに認知症や骨折は老年科では難しいですね。認知症は精神疾患の症状が出ることが多いので。(より子)
>子どもは小児科、高齢者は老年科、若者と大人は他の科に分断すること自体おかしいですよね。男女の場合は区分をする必要はありますが、同じ病気の治療では治療方針はさほど変わりないのに、年齢によって分断されるのは差別に値しますね。(あじ)
以上で終了です!!ここで私がジャッジをします。
結論は…子どもから高齢者まで、年齢に関係なく診てもらえる器官別の診療科で一貫した治療体制にすることを望みます!!
男女の場合は物理的な問題で、女性は婦人科(産婦人科・女性科)、男性は男性泌尿器科(男性科)で診てもらったほうがいいですが、年齢による分断はメリットはあってもデメリットもあります。
小児科は治療を嫌がる子どもに、キャラクターによる内装や親との付き添いが可能にしたりするなど、小児治療に万全の態勢が整っており、小学生・中学生では院内学級を完備したり、それ以下の子どもは院内託児所を完備したりしています。しかし、中学卒業以後は小児科での治療をすることができず、高校生で治療を分断される欠点があります。高校生になると担当する医師も代わってしまい、継続した治療や専門的な治療ができなくなり、取り返しのつかない事態になってしまいます。また、キャラクターの内装は小さい子どもにはウケても、中学生では嫌がる子もいます。
老年科は高齢者の病気に対応した治療方針で、高齢者とその家族、病院、介護施設との連携を密にすることができますが、高齢者の病気はさまざまで、老年科では対応できない治療もあります。それぞれの病気やけがで専門的な治療ができなければ、老年科はいらなくなってきます。
心臓血管外科や脳神経外科などのように、各器官で専門的に診ることができる診療科のほうが、子どもから高齢者まで一貫して治療したほうが好ましく、世代間の分断もありません。自分や家族が必要とする治療はそれぞれの器官に合った診療科で診察をしましょう。
今日はチャットジャッジ・第72回目「小児科・老年科は必要?不要?」をお送りしました。
*参考リンク*
親しい男友達(その17):http://umenomi-gakuen.hatenablog.com/entry/2019/11/30/130000
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