＊前回の記事はこちら！→https://umenomi-gakuen.hatenablog.com/entry/2021/02/08/140000
こんにちは。和弥（25歳・看護師）です。
新型コロナに感染し、一時重症に陥った後輩の利音（23歳・看護師）がコロナから回復し、2回のPCR検査がすべて陰性のため、ICUを退院した。
しかし、コロナの治療の際に不整脈を訴え、しかも感染する前の1ヵ月前に症状があったため、うちの病棟へ転院となった。
その不整脈は病的な不整脈のため、放置すると命に関わるため、手術が必要と診断された。
利音の手術を執刀するのは森本先生（44歳・外科医）。森本先生は主に小児の先天性心疾患の治療が専門で、ぼくの担当だった優太くん（中1）の手術の執刀も手がけた。しかし、小児の先天性心疾患だけではなく、大人の方の心疾患や不整脈の治療も担当しているので、今回の手術の実績もある。
利音の手術は「アブレーション治療」というカテーテルの手術で、普通の開胸手術に比べて体の負担も少なく、術後に問題がなければ1週間で退院は可能だ。
転院からすぐに薬による治療と手術前の検査。コロナで陰性になっても1週間は手術ができないため、薬で様子を見るしかない。
転院から2週間後に1回目の抗体検査で異常がなかったため、手術が可能となった。
そして、手術の日程も決まり、ぼくは利音のところへ。
和弥「いよいよ明日だね。」
利音「はい、すごく緊張します。」
和弥「先生たちやみんながついているから、大丈夫だよ。」
利音「ありがとうございます。がんばります。」
そして次の日。午後から利音の手術だ。
オペ室（手術室）まで運ぶのは担当のぼくと希亜良（ねこ・♀5歳）。
手術の準備も済ませて、タンカーで運んだ。
和弥「どう？緊張する？」
利音「すごく緊張するし、なんか…怖い…。」
和弥「大丈夫。みんなついているからね。」
ぼくはタンカーで移動しながら利音の左手を握って、利音の緊張をほぐした。
利音は看護師として多くの患者の手術の時には励ましたりはしたけど、自分が実際に手術となると、怖くて緊張をするんだなって思った。
オペ室に到着して、ぼくら2人に代わって、実波（24歳・看護師）らオペ室の看護師たちにバトンタッチ。利音の手術の身の回りの担当が実波となった。
そしてオペ室の扉が閉まった時点でぼくら2人は病棟に戻ることに。
そして、森本先生の執刀で利音の手術が始まった。
利音の手術の様子を気にしつつも、ぼくも希亜良も普段通りに仕事をしなければならない。
他の患者の介助や話し相手、カルテの入力などなど。
そして、手術から約6時間後にオペ室から電話が鳴り、利音の手術が無事に終わったとの報告があった。
実波の話では、手術前の局部麻酔の注射で泣き叫んで、その痛みで放心状態となってしまい、実波が利音のフォローに回った。手術中は眠らずに手術の様子を見ることができるそうだけど、利音本人は麻酔の注射の痛みが強くてさすがに様子が見れず、本人の希望で睡眠薬で眠りたいとのことで、麻酔科医が睡眠薬を投与して眠ったそう。
そのためか、手術中は順調にカテーテルが血管に入ることができ、問題の不整脈に到達して、無事に電流で焼失して、不整脈がなくなった。血管の傷もなく、無事に手術が終わり、ホッとした。
仕事も終わり、利音がいる病室へ。
中に入ると、病室のベッドで利音が寝ていた。
ぼくが来たのを気付いたのか、利音が起きた。
和弥「気分はどう？」
利音「少し吐き気がしそう…。」
一緒にいた希亜良が利音の背中をさすった。術後の時の一過性の血圧低下だろう。
あとで森本先生もやってきて、応急処置をした。血圧や脈を測ってやっと正常値に。
しばらくして、やっと落ち着いた。
和弥「大丈夫？」
利音「はい…ありがとうございます。手術は？」
和弥「大丈夫。無事に成功したよ。」
利音「よかった…。」
和弥「利音、よくがんばったね。えらかったよ。」
ぼくの一言で利音が涙ぐんでいた。緊張と恐怖から解放されて泣きそうになったんだと思う。
ぼくは希亜良をいったん病室から出てもらい、2人きりにした。
和弥「利音、今日はつらかったから、泣いていいんだよ。」
利音は泣いた。ぼくは利音の左手を握って利音をねぎらった。よくがんばったねって。
病室を出た希亜良も外で泣いていた。
夜になったが、利音が落ち着くまでそばについた。
2人で話しているうちに少し安心したのか、利音の心が落ち着いてきた。
退院まであと少し。それまでにはがんばろうね。
＊今回紹介したアブレーション治療についてはこちら！
不整脈とアブレーション治療（国立循環器病研究センター病院）：http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/treatment/ablation.html
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